カーマンライン

青く澄み渡った空に大きな船が浮いている。あの船は人々を救出して楽園へと導くものではなく、この星を脅かす巨大な爆弾だということは軌道を確認するに明らかだった。
傍受していたアーキバスの通信が、V.I フロイトの戦死を告げている。こうなってしまえばヴェスパーはお終いだ。戦力も、士気も、あの高く飛ぶ烏を撃ち落とすほどのものではない。
火花を散らしているオープンフェイスからは雑音しか聞こえず、彼の生体反応の消失が確認された。空で散った第一隊長は彼を拾いに現れるだろうか。いや、皆諸共地獄行きだ。烏に撃ち落とされ、全てが地の底へ落ちる。

だがそれもこれまでだ。
惑星封鎖機構の艦隊すら難なく撃破していく戦友を遠目で確認しながら、ザイレムへスティールヘイズ・オルトゥスを駆り出した。

空と宇宙の狭間に降り立つ。

「君と会えるのもこれで最後か」
鋼鉄の鎧の内側で消えた独り言が鼓膜の中で反響する。
ひとつ深呼吸をして、アサルトブーストを起動した。
こちらへ一直線に駆けてくる彼に、こちらも真正面から駆け抜ける。
鋭い音と共にコア同士が衝突して、衝撃を逃す間も無く互いに左手のそれを振り翳した。
回転するレーザースライサーの刃をパルスブレードが受け止める。
膠着は短く、戦友により弾き返されたレーザースライサーを畳んでクイックブーストで後ろへ飛び退いた。同じく戦友もザイレムへ足を下ろす。
今までの戦友とは違うと直感で理解した。
『ラスティ、全力でいくぞ』
その言葉に血が沸き立つ。
誰も邪魔をしてくれるなよ。
「ああ。来い、戦友」

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