悲運な事故
V.IIから直接依頼が届くのは初めてだった。なんでも、ヴェスパー第一隊長と第二隊長が上層部との飲み会に参加しなければいけないらしく、自分は上層部の接待に掛かり切りとなる為V.Iの護衛をしてほしいとのことだ。
ウォルターはACを扱わない依頼に難色を示したが、V.IIが珍しく食い下がったので引き受けることにした。
上層部には俺の参加を連絡していないらしい。別室で待機し、V.IIからの指示があれば動く形となる。
飲み会が始まって3時間が経過した頃、端末に通知が届いた。V.IIからワンボタンで届くその通知は何があったかなどの情報は一切ない。立ち上がり、待機室を出た。V.Iを探さねばいけない。
飲み会が開催されている部屋の前を通る。窓越しにV.IIと目が合い、それが右側へと指し示した。その先へ向かえば良いらしい。そのまま廊下を進む。
「大丈夫かな?フロイトくん。少しそこで休憩しようか」
V.Iに肩を貸して歩いている男がいた。
V.Iは声をかけられているが、体調が悪いのか明瞭な返答は無い。
なるほど。V.Iは上層部のお気に入りらしい。
「どうした」
「!?…独立傭兵レイヴン?…いやなに、酔い潰れた彼を別室で寝かせてやろうと思ってね」
「俺はV.IIにこいつの世話を依頼されている。渡せ」
「何?スネイルくんの依頼だと?」
「V.IIに報告しに行くがいいな?」
と、取り敢えず言っておけと依頼されている。
それを聞いた途端、男の顔はみるみるうちに青くなっていった。どちらにしろこれを目撃した時点で報告は確定なのだが、そんなことも想像に及ばないらしい。
「…はは!なんでもないさ、さぁ彼の世話をよろしく頼むよ!」
項垂れているV.Iを押しつけられ、足早に逃げていった。
「おい、大丈夫か」
返答はない。
呼吸は浅く、顔は赤い。脈拍も高くて、脂汗が滲み、眉間には皺が寄っている。いつも飄々としているこいつのこんな表情を見るのは初めてだった。
あまり長く歩かせるのも酷だろう。待機室に戻るよりは、近くの空き部屋へ向かったほうがよさそうだ。
先ほどの男が使おうとしていた部屋へと入る。
部屋のベッドに寝かせると、V.Iの意識が明瞭になってきたようだ。
「う…?なんだ…?くそ、…盛られたか…?」
V.Iが自身の頭を押さえる。瞳孔が開いていて、瞳の奥がちかちかと赤く弾けていた。コーラルドラッグだろう。
「大丈夫か?水をとっ」
手を掴まれる。
「まて、悪い、お前…相手になってくれないか」
ベッドに引き込まれてのしかかられた。
「?ACか?」
「違う…ヤらせてくれ。頭がおかしくなりそうだ」
「なにを…っ?」
口の中に舌が差し込まれた。熱くてぬめるものが舌を舐め上げる。引き上げられた舌を吸われて、ガリ、と噛まれた。痛い。
「…苦情は後でスネイルに言え」
解放された舌を仕舞って、そういうことか、と合点する。服を脱ぎ始めるV.Iを見て、こちらも仕方なく服を脱いだ。
ーーーーー
頭がくらくらして心臓がうるさい。ずっと熱を持つそこを早く発散させたくて仕方がない。今すぐにでもこの男にぶち込んで好きなだけ貪りたい。
僅かながらに残る理性をかき集めて、うつ伏せで下に敷かれているレイヴンを見下ろす。指に唾液をつけ穴を割り開いた。驚きからだろう、レイヴンの体がびくりと跳ねる。使ったことがないことを示すように結構な抵抗が指に絡みついた。
ちらりと表情を盗み見るが、少し焦りが浮かんでいる以外に特に変わった様子はない。いや、それだけでもかなり感情が出ている方だ。嫌がっている様子はない。耐えきるつもりだろう。どこまでも仕事に忠実なやつだ。スネイルにはこんなことまで世話をさせるつもりは無かったはずなのに。仕事だと判断したらどこまでのことを許すつもりだろうか。独立傭兵といえば独立傭兵らしいが。感情が希薄なだけマシか。レイプされてもまともでいられる。今日この仕事を受けたのがこいつで良かった。こいつ以外なら確実に面倒なことになっていただろう。
雑に解したそこに陰茎の先端を当てた。入り口に唾液を多めに垂らしてぐちぐちと塗り込む。
早く早くと急かす本能に抗ってゆっくりと中へ押し進めた。レイヴンが唸る声が聞こえてくる。
「おい、力抜け」
「力を入れてるつもりはない」
「深呼吸しろ」
息を吸った音が聞こえて、そのまま奥まで一気に落とし込んだ。
「かはっ…!?」
肉に包み込まれる快感に息を吐く。鋭くなった感覚は痺れを全身にもたらした。すぐに出そうだ。早く、早く。
抑えが効かなくなってどちゅどちゅと内臓を突く音が部屋に響く。レイヴンの口から絶え間なく苦しそうな声が漏れ聞こえてくる。
限界を感じて一番奥まで突き刺して欲を吐き出した。その間も尻に腰を押し付けて快感を逃す。下で震えているレイヴンの首筋へ顔を埋めて歯を食い縛りばちばちと弾ける脳に必死に耐えた。
「はっ、はぁ…う"、くそ…おい、大丈夫か」
「…こっちの台詞だ」
視界が眩しい。まともに目を開けられないまま、レイヴンの後頭部を横に倒して無理やり顔を覗き込むと涙で酷いことになっていた。生理的なものだろう。濡れた瞳と赤くなった頬が扇状的でクスリで未だ治らないソレが更に掻き立てられる。見るんじゃなかった。生唾をごくりと飲み込む。
「好きなだけ使うぞ」
上体を立てて抜かずに律動を再開させる。体液がかき混ざり結合部から汚い音を立てて溢れ出てきた。
「構わない」
「文句のひとつくらい、言わないのか」
中の比較的固い場所を押し潰すと布団を握る手に力が入った。肉の締め付けがキツくなる。レイヴンの肩が震えていた。その肩を抑えつける。
「っぐ…お前の方が、辛そうだ」
息も絶え絶え返ってきた言葉はこちらを案じているのだろう。変なところで気を遣ってくるな。唾液を拭う余裕もないらしいレイヴンは口元も濡らしていた。
「お前も大概だぞ」
だからといってやめてやることはできない。熱に抗えずひたすらに腰を打ちつける。はたから見たら醜くいさまに映るだろう。どこもかしこもおかしくて髪をぐしゃぐしゃにする。こちらも生理的な涙が出てきて口の中が塩辛くなった。唾液が口の端を流れ視界がちかちかと明滅する。全てが快感に塗りつぶされてそういえばこういう拷問もあるんだったな、と思考の端を横切った。
レイヴンの嬌声が徐々に大きくなっていく。こちらも体が、脳が焼け溶けて死にそうだ。なんてものを飲ませてくれたんだ。記憶が曖昧で顔を覚えていないからスネイルにチクることもできない。
大人しく抵抗もせず暴力に耐えているレイヴンを見下ろす。
健気だな、という感想が出てきたところでその思考を掻き消すように突き刺す力を強めた。こいつは今人形の役を全うしているだけだ。変な勘違いをするな。これもクスリのせいか。
こぽ、とレイヴンが少し嘔吐する。つらそうだ。だがそれすら興奮材料となって体がカッと熱くなった。
かわいそうに。上体を倒して後ろから抱きしめた。
レイヴン、と名前を呼ぶと、律儀に返事が返ってくる。
込み上げてきたものを一番奥に吐き出した。体が痙攣する。息がうまくできない。脳に強すぎる痺れが走って、死ぬ、と思ったところでぶつん、とブラックアウトした。
ーーーーー
V.Iが沈黙した。
強化人間でないにしろ鍛えられた体に全体重をかけられていると身動きが取れない。全身の怠惰感と関節やら内臓やらの痛みに耐えてなんとかヤツの下から抜け出す。
息はしているようだ。心拍数も早いが落ち着いてきている。
とりあえずV.IIに座標を送り、V.Iを床に転がした。シーツを剥がして、綺麗な箇所で体を拭く。V.Iの体も拭いてやる。
ため息を吐く。酷い目にあった。
V.Iと共に医者に簡単に診てもらったほうが良いかもしれない。至る所が痛く、胃はぐるぐるとした気持ちの悪さを携え、脳はばちばちと弾けているような感覚がある。こいつの体液のせいでこちらにも多少はコーラルが流れたらしい。
服を着て、V.Iにも服も着せてやると、どっと疲労感が追加で押し寄せてきた。ベッドに転がして、自分も隣に体を横たえる。
ドアが開かれる音と共に眠りについた。
ーーーーー
廊下の先からV.Iが歩いてくる。ひらりと片手が上げられて、こちらも上げて返す。
「この前は悪かったな。コンディションはどうだ」
「問題ない」
「じゃあやるか」
「ああ」
模擬戦場へ向かった。
『詫びに新作パーツをやる』
放り投げられたパーツを受け取る。先日発売されたばかりで、まだ購入していない武器だった。
「仕事をしただけだ。詫びは不要だ」
『…仕事の範疇を超えてるだろう。吐いてるヤツは初めて見た。内臓は傷ついてなかったか?』
「問題ない」
実際は全治一週間だったが。ウォルターに怒られた。とはいえ原因はあの上層部だ。追加報酬という名の口止め料兼謝罪金は受け取っている。
それにV.IIから聞いた話によると、こいつも一週間寝込んでいたらしい。互いに運悪く事故に遭っただけだ。
『まぁ、受け取れ。その方が有難い』
「わかった」
右手武器をパージして、新品のそれを取り付ける。
『…これだと俺が得をしてるようだな』
「そうか?」
何を気にしているのか知らないが、珍しくしおらしい様子のV.Iとの会話に付き合ってやる。
その傍らで脳内ではこの武器を使った場合の戦闘シミュレーションを続ける。
『まぁいい。今度それでアセンを組んで来い』
「ああ」
楽しそうなV.Iを見て、少しだけ胸がすっとした。