焼け落ちた鳥

「…漸く見つけたぞ、戦友」
MTの整備中だったその人は、スパナを下ろしてこちらへ目を向けた。黒い瞳の奥にコーラルがちかちかと弾けている。
「…戦友?人違いだろう」
彼は額の汗を袖で拭って真っ直ぐとこちらへ視線を交差させる。とぼけている様子はない。が、確かにその声は戦友のものだった。
「…もしかして、記憶が無いのか」
「ああ。…俺の知り合いか」
この星を焼いて、その焼いた星の上でのうのうと、この星を守るためのMTの整備をしている。
ぐらりと、頭が揺れた。
そこにはよく知る猟犬はいない。記憶が無く責めを負わない、ただこの星で懸命に生きるルビコニアンがいるだけだ。
それはもう戦友といえるのだろうか?
「戦友、きみは私たち同胞の仇だ」
怒りのままハンドガンの銃口を喉元へ当てる。
常なら即座に引けるトリガーが、やけに重い。
「…そうか」
抵抗をしない戦友は、あろうことかトリガーにかけている人差し指を押し込もうとした。その寸前に銃口を逸らし、彼の首の皮膚を掠るだけに留める。
「?殺すんじゃないのか」
「なにを…」
叫び出したくなる喉に力を入れて押し止め、代わりに右手が動いた。ハンドガンと頬骨がぶつかる音が響き、戦友の頬に血が滲む。
「何をしているんだ」
怒りで声が震えた。
「きみは、なぜ生きている」
口の中を噛んだのか、戦友が血を地面へ吐く。
「理由などない。何も分からない。だがお前は知っているんだろう。俺は誰かを殺した。だから殺される。それだけは分かった」
戦友はスパナを地面へ落とした。
「きっと俺はお前に殺されるために生き延びたんだ」

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