夢じゃない

体の機能を度々修復している戦友から、酒を呑めるようになったから付き合って欲しいと連絡が届いた。
以前も、味覚を修復したからおすすめの食べ物を教えて欲しいと言われ、それとなく二人で出掛けることに成功したことがある。
最近ではハンドラーからの視線もそれほど痛くはなく、信頼を徐々に勝ち取れているようで、酒という思考力が低下するリスクのある場も許されるようになったようだ。
戦友自身は元より警戒心は薄く、感情の希薄な第四世代特有の反応の薄さや、記憶の欠落による無知および無垢な反応を見ても誰にでも同じような対応をしているようだった。
もしこの誘いが私でなければ戦友は身に危険が及ぶ可能性が高い。独立傭兵という職業柄、恨みを買うことも少なくはないだろう。G5など最たる例だ。最悪殴り殺されるだろう。
誰にも媚を売らない姿勢、誰が僚機でも難なく合わせ仕事をこなすスキルとセンス、その強さと戦闘の容赦の無さは危ういものだが、その実私の好むものでもあった。
その彼が主に私を頼ってくれているという事実が、なんとも私の胸を焦がしてやまない。どうかその相手が私一人であって欲しいと祈るばかりだ。

「やあ戦友。ここは私のセーフハウスだ。君以外誰にも知られていない場所だから安全に酒を呑めるだろう」
「…感謝する」

早くに放棄された地にある、戦線からも遠いこのセーフハウスは、元はどこかの企業のオフィスだったのだろう。その仮眠室や湯沸かし室などを改造し、ある程度不便なく住めるようにした場所だ。

「誰かを呼ぶことがないから綺麗にしている物は私一人分しかなくてね、椅子は何とか用意したが、少しサビていて音が鳴るかもしれない。悪いな」
「構わない」

そう言って戦友が腰掛けたパイプ椅子からはギシと鈍い音が鳴った。暫く使っている私の方も同じように音を鳴らして体重を受け止める。

戦友がバックパックから瓶を取り出して机の上へ置いた。中で揺れるとろりとしたブラウンの液体は、瓶に刻印された酒そのもののようだ。飲み終わった後再利用されたものではない。つまり新品の、この星ではかなり珍しい酒だ。さすが星外から来た傭兵というところだろう。
アーキバスでも取り寄せた酒が販売されているが、数と種類はそれほど多くない。何せ組織を纏めている実質的トップは仕事に忙殺され酒の存在など頭にないV.IIだ。星外から取り寄せるには申請が必要で、そこに知らない酒の名前があったり本数が普段より多いとV.IIから説明が求められる。
かなり面倒かつ…面倒だ。
酒好きがなんとか説得して頭を縦に振らせた酒しか無く、その分数も少ないので高レートで取引がされている。なんとも頭が痛い話である。

なのでこれはその高レートの中勝ち取ったもので、彼の持参した酒よりも本来は安値のはずが、それより倍以上の金額を払った酒である。
透明で、そこそこ美味く、味に癖がなく飲みやすい。強化人間であればほろ酔いで済ませられるアルコール度数のものだ。

「君の酒はかなり良いもののようだな。いいのか?ハンドラーとも呑みたいだろう?」
「…ウォルターは俺と酒を呑まないようだ。友人と飲め、と」
友人。無意識に上がる口角に気付いて手で覆い隠す。
「そうか。なら彼の気遣いに感謝しよう。君と美味しい酒が飲めるなんて、今日を生き抜いた価値があるな」
「…大袈裟だ」



つい楽しくなって飲みすぎた気がする。
ふわふわとして思考が鈍る頭と、重い瞼がなんとか戦友の姿を捉える。彼の頬もほんのりと赤く色付いていて、どきりと心臓が跳ねた。スパイとなって誰かと二人きりで酒を飲んだ後にやることなど一つしかなく、その時の記憶が駆け巡ったからだ。
しかし今日は慎むべきだろう。何より戦友にそういう意味で近付いていたのだと勘違いされたくない。

「…ラスティ?大丈夫か?…そろそろ寝た方がいいんじゃないか」
「ふふ、ああ…そうだな」

もしかしたら夢でも見ているのかもしれない。戦友がラスティと呼ぶなど、今まで一度もなかったのだ。
頭の中で彼が紡いだラスティという音が何度も反響する。酒のせいもあってか、普段より吐息が含まれていて艶かしい。ごくりと喉が鳴った。落ち着け、と深く息を吐く。
ふと、窓の外が目に入った。飲み始めてからどれくらい時間が経っているのだろうか。

「…そういえば君、今日は帰らないのか」
「飲酒運転はしない」
「取り締まる機関は無いぞ。…構わないが、ベッドは一人分しかないんだ…。私はACの中で寝よう」
「いや、お前はかなり酔っているようだ。きちんとベッドで眠った方がいい。それに泥酔していれば就寝中に嘔吐し吐瀉物により窒息する危険性があるのだろう?なら俺も同じベッドで眠った方が安全だ」
やけに饒舌だ。
「そこまで酔ってはいないが…わかっ…」
…同じベッドで?戦友と?
いや、この場合気にしているのは私だけだ。私が手を出さなければ何も発生しない。戦友からこちらへアクションがあったことなど一度も無いのだから。考えすぎだ。
ふわふわする頭をフル回転させそう結論付けた。そうして思考を放棄した脳は睡眠を促す。

戦友に誘導されベッドの中へ潜り込んだ。ふわふわの掛け布団が更に眠気を誘って、もうほとんど意識は無い状態だった。戦友も隣へ潜り込んできて、シングルベッドの狭さから体が密着する。
仰向けに目を閉じて、おやすみ、と言ったような言ってないような。
くす、と耳元で吐息が聞こえた気がした。



肩に添えていた手をゆっくり下ろして服の中へと潜り込ませる。
腹筋の凹凸を指でなぞって、胸筋の下側も通り、胸の上に手を置いた。焦らすように繰り返すと、胸の突起が固さを増してきて、くすぐったいのか、ラスティが鼻にかかる息を漏らす。
「…ふふ、んん……」
飛び起きる様子は無い。
…随分と信頼されたものだ。

ウォルターからラスティについて、いや、彼のように距離を詰めてくる人間についての危険性を一通り教えられた。
情報収集や人心掌握の可能性が高い為、こちらの情報を漏らさない、入れ込みすぎないようにと。
ラスティは慎重な性格なのか(今現在は全く慎重な行動をしているとは思えないが)当たり障りのない話題選びをすることが多い。どれもこれも情報収集というには不要な情報で、彼の益となる情報を話したことは今まで一度も無い。
そのお陰もあってか、こうやってウォルターや自分からの印象は良く、ここまでこじつけられたのだが。

ラスティのヘソのあたりへ手を伸ばし、そこにあったベルトの金具を触る。金属の高い音が聞こえ、無事外し終わったベルトをズボンから引き抜いた。ベッドの下へ落とす。
彼はまだ目を閉じて幸せそうに眠っている。
ズボンのジッパーを下ろして、少しだけ膨らみを持っている股間へと手を這わせた。ぴくりと瞼が震える。
親指と人差し指で下着越しに軽く挟むように添えて上下に動かしていくとどんどん質量を増していく。
たまらなくて瞼へキスを落とした。
彼の人心掌握は成功しているといえるだろう。性欲が芽生えるほどにはラスティのことが好ましいからだ。
とはいえ、いいように使われる気は毛頭無いが。

ラスティはまだ目覚める様子がない。
ズボンと下着を下げて、硬度を上げつつある陰茎へ顔を寄せる。ちろりと先端を舐めると持ち上がったそれが鼻へ触れた。
…まだ引き返せる。
最近漸く分かってきた倫理観というものが歯止めをかけた。無理矢理性交することは相手の精神を酷く傷つけるものらしい。
どこからが性交かははっきりと分かっていないが、これを口に含むのは恐らく傷つける行為に値するだろう。

顔を上げる。安心しきった表情で眠っているラスティの耳へ口を寄せた。
「ラスティ」
彼がぼんやりとした瞳を覗かせる。
「ん…?戦友…?」
「お前を傷付けても構わないか」
ラスティは穏やかに微笑んだ。
「ああ…私に傷をつけられる人など、君くらいのものだ」
恐らくACに関してのことだろう。
とはいえ、正気に戻られても困るので、再度質問し直すことなく、表情を観察しながら陰茎を手で包みゆるく扱いていく。言質は取った。
彼を傷付けたくないという気持ちと、傷付けたいという相反する気持ちが渦巻く。
「ん…?」
ラスティと目が合った。
熱くとろとろと溶けている瞳がこちらを見上げる。薄く唇を開けて、目を細めた。
彼の腕がこちらの首へ回される。
引き寄せられ、はぁ、と熱い息が耳元で吐かれた。
「アルコールを用いた事、謝罪する」
このような方法しか考え付かなかった。
彼のものがしっかりとそそり立ったことを確認し、ポケットから個包装された潤滑液や避妊具を取り出しベッドサイドへ置く。身に纏っていたものを全てベッドの下へ放り投げて、潤滑液の封を切り、手のひらや指へ広げた。自身の肛門へ指を伸ばす。ここへ来る前に解しておいたこともあってか、難なく指を受け入れた。
彼の上へ乗り上げ、ぐちぐちと音が聞こえる中、ずっと欲しかった唇へ唇を重ねる。触れるだけで脳が溶けていくようだった。唇を食んで、たまに歯を立てて、もっと深くまで欲しいという欲求がどんどん膨らんでいく。
それをただ受け入れていたラスティが舌を出した。真似てこちらも舌を出す。温かくてぬるぬるしたもの同士が触れ合って、どうにかなりそうだった。
耐えきれず顔を上げると、舌から互いを結んで伸びた糸がぷつりと切れる。
ラスティが恍惚とした表情で舌なめずりをした。
カッと顔が赤くなる。
本当に、酩酊しているのか?

ばくばくと鳴り止まない心臓に苦しくなって、早く挿れたくて仕方なくなった。視線を下げると、自身から落ちる先走りがラスティの陰茎を濡らしていた。
衝動のままに腹についているラスティの陰茎を指で持ち上げそこへ腰を下ろす。
「ぁあっ……」
無意識に声が漏れた。
受け入れたことのない質量が中の肉を開いていく。
尻がラスティの腰についたころ、気持ち良くて苦しい不思議な感覚が身を焦がしていた。体重を預けると更に奥に入っていき、浅く息をしながら彼の腹に手を置く。
ラスティの表情を見る余裕が出てきて視線を下すと、彼はうっとりとしながらこちらを見上げていた。どきりと心臓が跳ねる。
「ラスティ」
「…戦友…♡」
手が広げられ、導かれるように上体を倒す。
首に腕が回り、口づけられた。
「今日の戦友は積極的だな…♡」
「…?」
今日の、と言ったが、こういったことをするのは初めてだ。まさか誰か他の"戦友"がいて、そいつと見間違えているのだろうか。もしそうだとしたら許し難い。こちらの心を溶かし、感情を引き出し、人間の欲を引き出したこいつが、他の人間にも同じようなことを…?
「ひっ!」
勢いよく後ろから突かれて思わず声が出て口を押さえた。
潤滑液がかき混ざって水音と肌がぶつかり合う音が部屋に響く。
「っ!…!♡」
いきなり与えられた刺激は痛みから徐々に甘い痺れとなり体を犯していく。力が抜けラスティの胸にへたり込んで肩を掴んで必死に耐えるが、頭の中はもうぐちゃぐちゃになっていた。
「はっ、は、うぅ…ッ━━!♡♡♡」
全身に力が入って足の先から頭のてっぺんまで快感が走り抜けていく。陰茎からとろとろ流れ出した精液はラスティの腹を汚し互いの腹の間で糸を引いた。
快感を逃そうと無意識に弓形に逸らした首に表面だけ歯を押し付けるようにして軽く噛みつかれ息が漏れた。
うつろな目で見下ろすと、ラスティが嬉しそうに微笑んでいる。どきりと胸が高鳴った。額に薄らと汗を滲ませ、頬を高揚させている彼はとても妖艶で、見たことのない、見てはいけないような気持ちになる。

体を起こすとラスティの腕が体を撫でながら名残惜しそうに離れていく。重い腰を上げて未だ硬度を保つラスティの陰茎を抜くと、ラスティが鼻にかかったような吐息を漏らした。
彼の一挙手一投足に心が掻き乱される。
ラスティの上から退くと、彼も上体を起こしてきた。
先ほど攻められ気持ちの良いところは理解したので、今度は彼に味わってもらおうと思っていたが、その姿勢では挿れるのが困難だ。
彼の動向を見守っていると、狼のように四つん這いになって獲物を狙う瞳を覗かせ、こちらの肩を軽く押してきた。そのまま後ろに尻をついて、足を投げ出す。その足の間にラスティが顔を埋めた。
「!?ラスティ…!」
「ん?」
べろり、と陰茎の先端を舐められる。ぞくぞくしたものが背中を駆け上がった。
大きな口がそれを根元まで咥える。あたたかくて柔らかい口内に迎え入れられ、思わず引けた腰を大きな手で力強く引き寄せられる。
舐められ、吸われ、足の根元を撫でられたりしながら、自身の腰を左右にゆるく振るラスティは尻から尻尾でも生えているように見えて、頭が沸騰しそうで、もう、なにがなんだかよくわからない。
「あ、う、ラスティ、待て、」
ラストスパートだと言うように抜き差しが早くなる。
頭を引き剥がそうとするが全くびくともしない。
「駄目だ、やめっ…〜〜ッ!!♡♡」
びゅるびゅると勢いよく口内に出しながらも、更に吸われて頭が真っ白になった。
「ッ♡♡♡!!ぁ、ぅ……!!♡♡」
ごくり、と喉が鳴った音が聞こえて思考が引き戻される。
「…今、」
「ん?気持ちよかったかな…?♡」
口元を手の甲で拭うラスティの口内から吐き出されるものはない。全部、飲んだのだ。
体の奥から湧き上がるものに衝動的に身を任せてラスティを押し倒した。ベッドサイドから潤滑液のパッケージをとり封を切り手に取ってラスティの足を持ち上げ尻へ指をあてがう。指をゆっくり沈ませながら上体を倒し、唇を押し付けた。
舌を差し込むとなんともいえない味が口内に広がり、こんなものを嬉しそうに飲んだのか、と更に体が熱くなった。
気持ち良いだろうと思われるしこりのある場所は避けて、中をほぐしていき指の本数も増やす。
3本難なく飲み込むようになったところで指を引き抜き、ゴムを取り出して自身の陰茎へ装着した。それを見たラスティは眉を下げる。
「戦友…?」
「?どうした」
陰茎の先端を穴に当て、ゆっくり押し込んでいく。
「そんなもの…いらないのに…ッ♡」
とん、と奥に先が当たって、ラスティが浅く息を吐き出した。気持ちが良くて奥をコツコツと軽く小突く。
「…負担をかけるわけにはいかない」
「ん、ぅっ、負担なんて…」
その言葉を無視して額にキスをしゆっくり抽出を繰り返すと、ラスティから甘い声が上がる。たまらなくて口を塞いで舌を差し込んだ。上も下もぐちゅぐちゅと音を立て鼓膜から脳がとろけていく。
「ぁ、あ"♡、んっ♡、せんゆうッ♡戦友"ッ♡」
「んッ♡ぐっ、ラスティ…♡」
嬌声の間に囁き合いながら口付けを交わし、髪を掻き乱し、頭を撫でる。その下では荒々しく奥を突き上げ、それに反応したラスティが中を締め付けた。
ぞわぞわする腰に上り詰めるものを感じ、ラスティを強く抱きしめる。彼も同じように背中に回る腕の力を強めた。耳元で低く呻く。
「ッ…出すぞ」
「ンう"ッ━━━━〜〜〜〜ッ!?♡♡♡♡」
ラスティが返事をしようとしたところで、前立腺に強く押し付け彼の全身に痺れが走り体が弓形に反る、が強く抱きしめベッドに押さえつけられているラスティは、快感を上手く逃せないまま息を詰まらせた。そのままびくびくと中が収縮し陰茎を搾り取るように刺激し、同時に腹の上で震えた陰茎からびゅくびゅくと精が放たれる。こちらもゴムの中に勢いよく出し尽くして、どくどく鼓動するそれにラスティが感じ入った。

いくらか痙攣していた体から力が抜けて、ラスティはくったりとベッドに体重を預けた。合わせて抱きしめている腕の力を抜くと、ラスティはぼんやりとした瞳から涙をひと雫溢し、薄く開いた唇から浅く息を漏らした。
「はぁ♡はぁ、♡…」
陰茎を抜いて、ゴムを外しティッシュで包んでベッド脇のゴミ箱に捨てる。
上から覗き見ると視線が交差した。頬を撫でて涙を拭う。
「以前お前を抱いた戦友というのは誰だ」
「え…?」
ラスティは冷静を取り戻したのか、目を丸くして、高揚していた頬を更に赤く染めていった。
「あれ?戦友…?」
「…ああ。お前の想像していた戦友とは違ったか」
「それは…そう、なんだが…」
やはり、違う男だったか。湧き上がる怒りを覚え、自然と眉間に皺が寄った。この男といると様々な感情を引き出される。このようなことがあるのは、ラスティだけなのに、ラスティは他の戦友とやらに体を許している。あれだけ乱れる姿を見せるのを許す、どこの誰だか分からない戦友を殺したくてたまらなかった。
ああそういえば、"君の戦友"と自身を呼称していたな。俺の戦友はラスティだけだが、ラスティの戦友はやはり俺だけではないのだろう。
「"戦友"は何人いる?」
「??」
ラスティはその発言が理解できないとでもいうように、とぼけた表情を見せる。よほど演技が上手いらしい。それは本当の表情のようにしか見えなかった。
「まってくれ、君の質問の意図がわからない。…それに、その、これは夢じゃないのか?」
「…夢?」
ラスティは視線を逸らしこちらへ目を合わせようとしない。やましいことがあるのだろう。頬を掴んで、無理やり前を向かせる。瞳が揺れて、眼球に残っていた涙がまたひと雫こぼれた。
「俺がお前を酒に酔わせて抱いた」
「なっ……」
「それで、戦友はどこの誰のことだ」
ラスティがまた視線を彷徨わせる。頬を赤らめつつも罰が悪そうにしていることから、本当に、戦友が、どこかに。
深くため息を吐いて、上体を起こした。
この感覚を言語化するなら、失恋した、というやつだろう。
ねと、と互いの腹の間を糸で繋ぐ白濁した液が、先ほどまでは愛おしかったのに、嫌悪すら覚える。
「あ、待ってくれ、戦友」
今度は顔を青くしたラスティに腕を掴まれた。
「戦友は君だけだ。本当だ。どうしてそんな勘違いをしたのか私はまだ分かってあげられていないが、戦友は君しかいない、レイヴン…C4-621」
まだ嘘を重ねる気か。睨みつけると、ラスティの肩がびくりと震える。…この程度、死線を潜り抜けた彼であれば恐れを感じる程でもないと思うが。
仕方なく、彼が言う勘違いとやらの理由に答えてやる。
「…今日の戦友は積極的だと言った」
「…あ…」
ラスティがまた赤くなる。忙しいやつだ。ため息を吐いて手を振り払い、ベッドから降りようと足を投げ出すと、後ろから声がかかる。
「君を、夢の中で何度も抱いたり…抱かれたりしている」
ギシ、とベッドが軋んだ。背中にラスティの額が寄せられる。
「だからその、酔っていたこともあって、いつもの夢だと思っていたんだ。だから今日の戦友と言ってしまった……まさか現実だったとは思いもしなかったが…」
後ろから腕が回ってきて、胸の前で交差する。
「君、酒に酔わせてまで私を抱きたいと思っていたのか?」
耳元で妖艶に囁かれ肌が粟立った。
「いない戦友に嫉妬までして、随分感情を見せてくれるようになったな。…嬉しいよ」
首筋を吸われて、ちくりとした痛みが走る。後ろを振り返ると唇にキスが落とされた。
「一度シャワーを浴びようか。お互いにドロドロだ」
ベッドから降りたラスティは、こちらの手を引いて立ちあがらせた後、そのまま二人でシャワールームへと向かう。どうやら仮眠室と隣接しているようだったが、入り口は一つしかない。

振り返ったラスティが怪しく微笑んで、手を引かれて導かれるままシャワールームへ足を踏み入れた。後ろでドアが閉められる。

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